自賠責保険で後遺障害の等級が認定されると、被害者は傷害の損害賠償額に加え
て、後遺症についての損害賠償や逸失利益を請求できます。
交通事故の後遺症とは、これ以上治療を続けても改善しない状況のことで、むちうち症や失
明、手足の切断など、傷の治療が終わっても障害として残るものをさします。
交通事故の怪我による治療をしても、ある時期になるとそれ以上の改善が見込めない状態に
なることがあります。また、治療により痛みの緩和がみられても、症状の軽減がはかれない
状態も含み、たとえば病院で治療の効果が見られても、家に帰ってしばらくすると元の状態
に戻ってしまうような状況も、後遺障害が検討されます。
医師はこの状態になると診断書に「○年○月○日治癒(または症状固定)」と記載します。
この状態で、被害者に一定の障害(痛みや傷跡など)が残っていた場合、これが後遺障害と
判定されるかどうかで、被害者の請求できる損害賠償の範囲が変わってきます。
事故によって後遺症が残った場合、被害者側は傷害の損害賠償額とは別に、加害者に後遺症
についての損害賠償を請求できます。
後遺症による「慰謝料」とは、後遺障害が残ったことに対する精神的な苦痛に対する損害賠
償のことです。
交通事故による後遺障害は自賠法によって定められており、労災の障害認定の基準をそのま
まあてはめ、1~14級までの140種類の後遺障害が35種類の系列に分類されて規定さ
れています。
後遺症の損害賠償額
①後遺障害に伴う将来の治療費介護料②後遺症による逸失利益③後遺症に対する慰謝料
怪我に対する保険金の他に遺失利益や慰謝料などを損害賠償として請求できます。
傷害の損害賠償額+後遺症の損害賠償額=後遺症が残った場合の損害賠償額
|
後遺障害の判定は、保険会社ではなく損害保険料率算出機構の調査事務所が行います。
ここで「後遺障害に該当するのか」の判定や、該当する場合には自賠責保険の保険の支払い
金額や「後遺障害等級認定」を行います。
尚、自賠責がJAの場合は後遺障害認定の調査は共済連で行います。
ただ、後遺障害の等級認定は非常に厳しく、申立を行っても「非該当=後遺障害ではない」
と判定されることが多いのが実態です。
後遺障害が認定されても被害者が感じている症状より低い等級であることも多いです。
この場合には、異議申立という手段がありますが、単に異議申立するだけでは、希望の後遺
障害等級は認められにくいので、追加の診断書や新たな証拠
となる画像等の検査資料(筋電図やMRIやレントゲン写真など)を添えて異議申立を行い
ましょう。
後遺症による「逸失利益」とは、後遺症が残って事故にあう前とは同じように働けず、収入
が減ることが明らかな場合に、収入の減少する分を賠償させようとするものです。
逸失利益は
収入(年収)×労働能力逸失割合×喪失期間に対応するライプニッツ係数
で求められます。
実際の逸失利益の計算においては、後遺障害等級表に対応する労働能力喪失率を基準として
職種・年齢・性別・障害の部位や程度・減収の有無・生活上の障害の程度などに基づいて決
定します。
労働能力喪失期間は、原則として就労可能年数(67歳)まで喪失することとなっています
が、比較的軽度の機能障害や神経障害については、内容や程度・労働などの具体的状況によ
って喪失期間が限定されることもあります。
■事前認定と被害者請求による申請手続き
後遺障害に対する自賠責保険金を受領するには、損害保険料算出機構によりう等級認定を受
ける必要があります。
加認定手続きには、加害者側の保険会社に後遺障害診断書を提出して保険会社から申請して
もらう方法(任意一括請求による事前認定)と、自らで書類を全部揃えて直接申請する方法
(被害者請求)があります。
事前認定をとった場合、被害者は何もしなくてよいので手続き的には大変楽なのですが、そ
の際に保険会社側の意見書が添付されて、等級認定に不利になることもあるので注意が必要
です。
事前認定にしても、被害者請求による認定にしても、医師に「自動車損害賠償責任保険後遺
障害診断書」を作成してもらい、提出します。その際に、「自動車損害賠償責任保険支払請
求書兼支払指図書」とともに診断書・診療報酬明細書・事故発生状況報告書・レントゲン・
CT・MRIなどの画像も提出します。
被害者請求の場合は、必要書類を加害者が加入している自賠責保険会社あてに提出します。
必要書類は、
保険金・損害賠償額支払請求書、代理人による請求の場合は実印を押した委任状と印鑑証明
書、請求者の印鑑証明書、交通事故証明書、事故発生状況報告書、医師の診断書、診療報酬
明細書、後遺障害診断書、通院交通費明細書、休業損害の証明書、画像です。
これらを受理した自賠責保険会社が損害保険料算出機構の調査事務所へ書類などを送り、調
査事務所が後遺障害等級表と医師の診断書や診療報酬明細書による書面審査で判定します。
※醜状障害(見える範囲にある皮膚上の傷痕)は調査事務所の担当者が被害者と面接して、
長さは範囲を計測します。
一般的に後遺障害認定は短くても2~3カ月程度かかります。
後遺障害等級は労災保険にほける障害認定基準に準拠して1級~14級まで分けられており
どの程度の重い障害が残ったかを判断する基準になります。
■後遺障害診断書作成時の医師との面談について
後遺障害の申請の時期は、原則的には事故重傷後6か月経過すれば、後遺障害等級の申請を
することは可能です。
※原則6か月経過してから申請しますが、それ以前に医師から症状固定の診断が出る場合に
は、その時点以降の申請は可能です。
(自賠責保険に限らず、労災保険・身体障害者手帳・精神障害者 健康福祉手帳も同じ)
ただし、申請する時には医師から「症状固定である」と診断が出ている必要があります。
つまり、医師に後遺症が残ると被害者が負った後遺症がどの程度のものなのかを「後遺障害
診断書」で証明してもらうのです。
後遺障害等認定にとって後遺障害診断書は重要な書類なので、十分な記載をしてもらう必要
があります。被害者は医師と面談して、診断書で強調して記載してもらいたい点や詳細に記
載してもらいたい点などをきちんと伝えましょう。
後遺障害診断書の診断書作成におけるポイントは、医師に具体的な自覚症状
(例えば、事故によって腕に力が入らなくなってしまい、米とぎがしにくくなった、骨折の
後遺症で足の関節が曲がりにくくなった、いつも頭痛がするなど)
を明確に伝え、自分がで納得できる診断書を書いてもらいます。
そして、医師には他覚症状として、受傷状況と症状経過について、画像で症状が確認できる
か、可動領域の測定値(健側と患側での関節の屈折度の違いをしっかり測定してもらう)な
ど具体的に記載してもらい、他覚症状で自覚症状が裏付けられているようにします。
尚、後遺障害診断書は医師しか書けません。接骨院に長期間通院していた場合は接骨院の先
生は柔道整復師ですので、後遺障害診断書は書くことができませんので注意が必要です。
もし複数の科を受診しており、後遺症が残った部位が、たとえば整形外科と耳鼻科である場
合は、それぞれの後遺障害診断書が必要になります。
後遺障害等級を獲得すると、入院や通院などの「傷害に対しての慰謝料」にプラスで「後遺
傷害に対しての慰謝料」が請求できます。
後遺症の等級により以下の金額を限度に保険金を受け取る事ができます。
被害者請求の場合は、認定されると、指定口座に振り込まれます。つまり自賠責の限度額に
ついては、示談することなく、先に受け取ることができます。
| 等級 |
自賠責保険金額 |
うち慰謝料額 |
労働能力喪失率 |
| 1級 |
3,000万円 |
1,100万円 |
100% |
| 2級 |
2,590万円 |
958万円 |
100% |
| 3級 |
2,219万円 |
829万円 |
100% |
| 4級 |
1,889万円 |
712万円 |
92% |
| 5級 |
1,574万円 |
599万円 |
79% |
| 6級 |
1,296万円 |
498万円 |
67% |
| 7級 |
1,051万円 |
409万円 |
56% |
| 8級 |
819万円 |
324万円 |
45% |
| 9級 |
616万円 |
245万円 |
35% |
| 10級 |
461万円 |
187万円 |
27% |
| 11級 |
331万円 |
135万円 |
20% |
| 12級 |
224万円 |
93万円 |
14% |
| 13級 |
139万円 |
52万円 |
9% |
| 14級 |
75万円 |
32万円 |
5% |
このように14級が認定された場合は75万円、12級が認定された場合は224万円が振
り込まれます。これは自賠責保険の傷害(げが)限度額の120万円とは別枠になります。
但し、この金額は自賠責保険で支払われる上限の保険金額であり、加害者が任意保険未加
の場合は、仮に後遺障害によってこの金額以上の損害が発生しても、これ以上は支払われま
せんので、ご注意ください。
■後遺障害が二つ以上ある場合の取り扱い
自賠責保険では、後遺障害が2つ以上ある場合、重い方の後遺障害等級に該当するものとな
りますが、以下の場合は等級を繰り上げる(併合する)こととなっています。
①第13級以上に該当する後遺障害が2つ以上ある場合、重い方の後遺障害等級を1級繰り
あげる
②第8級以上に該当する後遺障害が2つ以上ある場合、重い方の後遺障害等級を2級繰りあ
げる
③第5級以上に該当する後遺障害が2つ以上ある場合、重い方の後遺障害等級を3級繰りあ
げる
自賠責保険の請求手続きは行政書士の業務です。中でも、後遺障害等級認定手続きは、傷害
事故にあった被害者の損害を明らかにする上で、とても重要です。
当事務所は、被害者請求や後遺障害等級認定の中で特に認定が難しいとされる、むちうち症
や頭痛などの神経症状の異議申し立てに力を入れています。
後遺障害の等級認定手続きをしたけれど、納得できる結果でしたか?
後遺障害等級非該当になった場合や、認定された等級に不満がある場合は、なぜそのような
結果になったのかを考える必要があります。
そのための第一歩として後遺障害診断書に書かれている内容を理解することが大切です。
主治医に書いてもらった「自動車損害賠償責任保険後遺障害診断書」について詳しく知りた
い、痛みを感じているまま症状固定となりこれから後遺障害の申請を行いたい、認定された
後遺障害の等級結果に疑問があるなどございましたらお気軽にご相談ください
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